ひとりごと

社長のひとりごとVol.6

先月、東北地方を突然襲った大震災。
今回この話題について、触れるべきか否かとても迷いました。
被災者の方や、亡くなられた方、今も懸命に作業されている関係者の方々の心中を思うと、はたして書いてよいものかどうか…。
実際、別の原稿を書き上げていたのですが、やはり避けてはならないような気がして、あえて載せることにしました。
もちろん、ぼく自身が感じたことなので、独り言として読んでもらえればありがたいです。
今年の年始に、宮島の大聖院に参拝した時のことです。
社員全員で祈祷していただいた後、住職さんのご法話を拝聴しました。
話の内容は、「今年は、“辛卯”(かのと・う)といって、今までの閉塞を破って、激しい動きのある大変動の年」というものでした。
実際に前々回の“辛”は、91年で旧ソ連が崩壊した年で、前回の“辛”は01年で、9.11テロ事件が起きた年。両国ともその2年後に大きく形を変えています。
住職さんは「“辛”という字が付いていますが、これはしんどいとか、つらいと捉えてはいけない。さらに成長するために、今あるものを一度壊して大きく飛躍するといった意味で捉えるんです」と、おっしゃっていました。
この度のニュースを見たとき、「ああ、このことだったのか…」と衝撃を受けました。
このことを前向きに捉えなければ、日本は飛躍できないと感じました。
今まで日本は、経済優先主義や便利至上主義、科学絶対主義が、世の中を席巻してモノやお金のみを追求し、道徳や宗教教育を排除してきました。
しかし、今回の震災でそれらすべてが、あっさりと崩れ去りました。
防災科学技術による災害予防システムや、徹底した技術と理論に基づいた原子力の安全神話は覆され、都心部では我先にと己のエゴをむき出した商品の買い占め・・・
戦後日本が、絶対と信じてきたものは砂上の楼閣でしかありませんでした。
 では、これから日本が必要としているもの、信じられる絶対的な価値をもつもの、それはなんでしょう?
それは、他者を思いやる「こころ」だと思います。
被災地の人たちが、大混乱の中でも商品や救援物資を奪い合うことなく、きちんと並んでいる姿に、ニュースを見た海外の人たちは驚いたそうです。
私も、同じ日本人として誇らしく思いました。
義援金も国内だけで、合計1000億円を超え、ボランティアの人たちも続々と集まっています。
これらはすべて日本人が本来持っているおもいやりの「こころ」が形になったものです。
いま、日本も大きく変化しようとしています。
混迷の今の日本を強く大きく成長させるためには、揺るがない芯が必要です。
それは、まちがいなく日本人が古来より受け継いだ道徳観念や倫理観だと思います。
日本人がこころを一つにして一つの目標に向かって進む。
それは、とてつもない力を生みだすでしょう。
二年後の日本は「こころ」の国になっていてほしいと願います。
                   
                     代表取締役社長  岡本 英之(2011.4月号エコヨムより)