2013.6月号エコヨムより
厄介なことが起こると、必ず祖父の言葉を思い出します。
「この世で起こることは、ぜーんぶこの世で収まる。
あの世まで追いかけちゃあ来んけえ、なーんも心配せんでええ・・
なるほど、所詮、人間生まれて死ぬだけのこと。
あれこれ考えても仕方ない、と僕自身ふっ切れるんです。
祖父は、今から10年ほど前に93歳で亡くなりました。
豪放磊楽な性格で、またおそろしくわがままな人でもありました。
15歳で単身渡米し、下積みを経て起業。
「お金はすぐ逃げるが、土地は逃げん」と、
ところが、残念なことに戦後の農地改革で、
しまいました。
今の造幣局に当たるところが、それです。
普通なら「今までの苦労が水の泡だ」と嘆くところですが、
無うなって良かった。あれが残っとったら、
腰が痛いくらいじゃあ、すまんで・・・」
とにかくポジティブで、
また、セールスの人が来ると「むげに断っちゃあいかん。あれら(
仕事じゃけえのう」とか、「値切っちゃあいかん。あれら(彼ら)
あるんじゃけえのう」と言っていました。
そのおかげでしょうか、僕は訪問したお宅で、
祖父の徳だと思って感謝しています。
今でも印象に残っているのは、
祖父も高齢のため、かなり衰弱していて自力で歩けなくなり、
僕は、そんな祖父を車椅子に乗せて、
ちょっと肌寒いくらいでしたが、目の前に広がる地御前の海は、
「じいちゃん、寒くない?」と聞くと、「だいじょうぶ」と、
少し寒そうにしていたので「ほんとに大丈夫?」と聞くと、「
それで、、僕も気持が良かったので、
が、後日、祖父はそれが原因で風邪をひいてしまいました。
きっと少しでも長く、僕と一緒にいたかったのでしょう。
「寒い」と言ったら、僕が帰ってしまう。
お見舞いに行き、「寒かったんじゃろ?ごめんね。」
「ありゃあ、関係ない。あん時は、暑いくらいじゃった。」
僕が責任を感じないように、後悔しないように、
今でも、ときどき祖父のやさしい笑顔を思い出します。
「ひでくん。この世で起きることは、この世で解決する。
代表取締役社長 岡本 英之(2013.6月号エコヨムより)