社長のひとりごと32

社長のひとりごとVol. 32「足を知る」

セレブのお宅拝見とか、芸能人の豪邸訪問ていう番組、よくやってますよね。
僕、あれがどうもニガテなんです。
何度か観たことがありますが、なんていうか、観ていて気分が滅入るというか
(ただのひがみだったりして)とにかく、すぐチャンネルを変えます。
けど、あの手の番組が絶えることなく続くってことは、観る人が多いってことですよね。
うーん、不思議。  *あくまで僕のひとり言です。
「またそれ?」と言いたくなるほど、どこのお宅もよく似ていて共通点が多いです。
大抵、ガレージには、1台が一千万円以上するとかいう高級外車が、
4、5台ズラリと並んでいます。そして、ウォークインクローゼットには、
「一回しか着たことがない」大量の洋服や「買っただけで満足した」という
おびただしい数の靴が、ブティック並みに収納されています。
サイドボードには「世界に何個しかないシリーズ」の食器やグラス。ショーケースには
「総額は、かる-く億を超えます」という、ジュエリーや高級時計がズラリ。
挙げればキリがないですが、とにかく、ウンザリするほど皆さま、趣向が似ていらっしゃいます。
で、なにがニガテなんだろ?と理由を考えてみると、お金に対する価値観が、あまりに自分と
かけ離れているからだと気付きました。無論、価値観なんてのは、人の数だけあるし
個人差もありますから、そこに異議を唱える気は毛頭ありません。
当然、お金を稼ぐのも、大切なことだし、あれだけ沢山稼がれるってことは、それは大変な
ご苦労をなさったと思うんです。だから、それ自体は素晴らしいし、思うように使われたら
良いと思います。
けれども、「お金が有り余って使い途がないから、とにかく贅沢品を
買いまくってお金を消費してます」という風に見える番組の構成にはゲンナリします。
資本主義社会ですから、消費を促進して貨幣を流通させなければいけないのはわかります。
が、番組を観ていると、贅沢を推奨している、金銭感覚を狂わせている、働く目標を歪ませている、
そんな気がするんです。
そもそも何のために稼ぐのか?お金の価値とは?
かつて、高度経済成長期において、日本人は「掃除機」「洗濯機」「冷蔵庫」いわゆる三種の神器を
求めて、必死で働きました。 * のちに、掃除機に代わりテレビが台頭する
今では、一般家庭にあって当たり前となっていますが、当時は贅沢品といわれたそうです。
もちろん、無くても生活できるという意味では、贅沢品かもしれませんが、主婦の家事負担を軽くし、
自由な時間を作り出せるなら、それは生活必需品だと思います。
贅沢とは、「度を超えて、ものごとに金銭をつかうこと」です。
ですから、人生をより楽しく、より豊かにする為に使われるお金は、けっして贅沢ではないですよね。
いや、仮に贅沢だとしても、とても有意義なお金の使い方だと思うのです。
そこで、いわゆるセレブのお金の使い方に対して疑問が生じるわけです。はたして、彼らのお金の
使い方は妥当なのでしょうか・・・。
お金の使い方に正解はありませんが、僕は違和感を覚えるのです。
「清貧」という言葉があります。
辞書によると「富を求めず、正しいおこないをして貧しいこと」だそうです。
けれども、別の解釈もできます。
無駄な浪費を抑えて、自分が本当に価値をみとめるものにだけ、お金を使う。
なにかを買う前に、本当にそれが必要なのかどうか、もう一度、問うだけでもいいと思います。
そして、本当に必要であれば買う。そうでなければ買わない。それだけでいいんです。
言い換えれば、不要なものを欲しがらない。つまり「足るを知る」ということが、重要なんです。
「足るを知る者は富む」といいます。きりのない欲望に捉われることなく、
満足を知ることができる者は、貧しくとも心は豊かで幸せになれるという意味です。
「足るを知る」
これを会得したものだけが、お金の真の価値を知り、その呪縛から
解き放たれるのではないでしょうか。
 代表取締役社長  岡本 英之 (2014.4月号エコヨムより)