社長のひとりごと31

3月11日、祖母が他界しました。享年104歳。大往生でした。
東日本大震災で亡くなられた方々のことを思えば、病院のベッドで最期を迎えられた祖母は、本当に幸いだったと思います。
以前、祖父のことをこの誌上で書いたと思いますが、祖母も同じく働きものでした。
長い農作業のせいで、腰は90度に折れ曲がり、手足の皮は分厚く硬く、右手の人差し指は変形し、左に大きく折れ曲がっていました。
いつも畑や田んぼにいて、働いているところしか見たことがありませんでした。
「自分は苦労しても、子どもや孫が少しでも楽ができるように」「万一、子供らに
何かが起きても助かるように、土地だけは残しとかにゃあ」
常にそう言って働き続ける人でした。
子供や孫の未来を守ろうと懸命に働き続け、そして旅立ちました。
背中で、働くことの大切さ、次の世代へつなげることの重要さを僕に教えてくれた、かけがえのない人でした。
また、飼っていた犬や猫が死んだときに、泣きじゃくる僕の頭をやさしく撫でながら「そうやって泣くのは、ひでくんがやさしい証拠じゃ。誰かのために泣ける、そう
いう優しい心は、大人になっても、いつまでも持っとかにゃあいけんよ。ミミ
(飼ってた猫の名)は、こうやってひでくんに命の大切さを教えに来てくれたん
じゃけえ、ありがとう言うて送ってやりんさい」と慰めてくれたのも祖母でした。
厳格だけど、本当に優しい祖母でした。
棺に納められた祖母の頭を何度も撫でながら、心の中で感謝とお礼を繰り返し
ました。
けれども、「ありがとう」の言葉は最期まで一度も口に出せませんでした。
口に出した瞬間、涙が止まらなくなるのがわかっていたからです。
けれども、そんなことは、祖母にもちゃんとわかっているはず。
だって、僕のおばあちゃんですから。
                      
                      代表取締役社長  岡本 英之 (2014.3月号エコヨムより)

社長のひとりごとVol. 31「ぼくのおばあちゃん」